自由の森再生プロジェクトX 〜挑戦者たち〜 後編

         やっと後編。ナレーターは、引き続き田口トモロヲ 


5月30日体育祭


 自由の森学園のグラウンドに、八木と坂下が、印刷物を配る姿があった。寮の修繕作業への参加を呼びかける内容だった。多くの保護者が参加してくれないと、7月中に作業を終えることができない。一人でも多くの保護者に知らせたいその想いだった。


 昼頃、中村は、一人の保護者に注目した。鉄板を前にして器用に焼きそばを作っている田中だった。


 スタジオにて
国井アナウンサー「焼きそばを作っている様子を注目したというのは?」
中村「寮の作業ができる人だとピンときたんです。勘です。」
国井「内装ができると勘で分かった?」
中村「勘です」
国井「…?」


 中村が田中に声を掛けて、この時から、田中が加わった。作業は、6月から徐々に始まっていった。初めは、中学1年のメンバーが多かった。田中が中学1年2組なので、呼応した形だった。回を重ねるごとに、その輪は広がって行った。毎回、新しいメンバーが加わり、7月4、5日には、60名近い参加者を数えた。また、作業への参加以外にも、雑巾などの寄付が、どんどん送られてきた。富岡は、カーテンの布地を寄付するだけではなく、製作の段取りをした。
 坂下はこの様子を「雪玉が大きくなっていくように、どんどん膨らんでいった」と語った。
 

 慣れないペンキ仕事で頭からペンキだらけ。暑い日が続き、汗が滝のように流れる。しかし、
 今日だけと言って参加した保護者が「やってみたらハマりますねぇ。また来ます」
 「おしゃべりしながらで楽しかった。本当にいい交流ができてよかった」 
 みんなが一つの目的の元、がっちりと手を組んだ。笑顔は爽やかだった。
 

 協力してくれたのは、保護者だけではなかった。寮監がフル稼働で働いた。寮生の保護者でなければ、話す機会もなかったはずだった。食生活部も、冷たいスイカを差し入れてくれた。


 寮は、みるみるときれいになっていった。


 作業は、7月一杯で終えることができた。



 8月3日と8月12日、二つの学習塾の夏合宿の最後の夜、寮の修繕作業に加わった保護者の何人かが、また集まった。寮と学校をつなぐ辺りをランタンで飾った。最後のプレゼントとして。



 ランタンの明かりを眺めながら、優しい時間を過ごした。




 終わり
 
 
 

プロジェクトXは、終わったけど、自由の森再生プロジェクトは、まだまだ続く。(高橋)